68 目ぞろえ会

生産者の方にはわかる事なのですが、私たちがあまり知らないような話です。
今まで色々な生産ページをリンクしてきましたが、どこにも書いていないような話なので、
この場で書いてみたいと思います。

すいか 目ぞろえ会

栽培環境
愛知県のとある産地です。すいかの大産地として有名な熊本の鹿央農協すいか部会は
千名近くいるそうですが、今回うかがった場所は生産者が3名しか
いらっしゃいませんが、日量750箱以上出荷され、これが約40日間続きます。
一人あたりの生産量は日本でもトップクラスになるそうです。
もちろんお手伝いの方もたのみますが、基本的には夫婦3組で行っています。
若い方で65歳ですから、あと何年持つかわからないと言われました。

すいかは1月頃から作業を行って、最終の後かたづけまで入れると
8月頃までかかります。
それから年末にかけては、白菜を栽培しておられます。
すいかと白菜の栽培農家ですが、どちらがいいのかと聞くと、
作るのは白菜の方が簡単だが安くなると底なしに安くなるので儲かったことがないと
教えてもらいました。

すいかの場合、1反あたり(約300坪)25万ほどの反収になり、
いいときには40万くらいはいくそうです。
すいか栽培で一番苦労することは、受粉作業なのだそうです。

栽培
1つの株から4本つるをのばし、株元より葉の数で17枚か23枚めにつくめしべに
おしべを使って受粉させます。
作業を見ているとおしべをつみ取って、めしべにくっつける作業を延々と
繰り返していきます。花は朝咲いてお昼過ぎにはしぼんでしまいますから
その間が時間との戦いです。
朝早く作業を行おうとしても寒い時期なら花粉がでないので、明るくなった頃にしか
作業できません。
この方たちの場合、生産量が多いので、人間だけではできないので、
みつばちも利用しています。
トンネル栽培(*)なので、その中にみつばちを放ち、受粉させるのです。
みつばち千匹で約6000円ほどかかりますが、1つのトンネルに1セット使用しますから、
総額では何十万もかかります。

以前は全部手作業で行っていましたが、今はみつばちの力を借りているそうです。
それでもきちんと受粉したのかどうかは最終的には人が確認します。
(*トンネル栽培)苗を植え付けるときに温度を確保するため、ビニールで
トンネルを作り苗を覆います。

管理
すいかの成長はまず縦に延びて横に延びます。
めしべに花が付いている状態でも小さなすいかを付けています。
上記に書いたように1株で4本つるをのばし、2玉実らせるようにしないといけないので、
それ以外は花摘みや摘果を繰り返します。
L・2Lクラスを主体に仕上げようと思うとこの形が理想なのだそうです。
きちんと緑色に仕上げるために玉ころがしを行い、どこから見ても緑になるようにします。
そのままにしておくと日の当たらない場所は黄色になります。

収穫
先ほども書きましたが、収穫するのに品種で3品種栽培しています。
大きくわけて早生・中手・奥手です。早生が約1週間、中手・奥手が各2週間ほどです。
もちろん品種名がありますが、すいかの場合品種名より産地ブランドを大切に
考えているので、あまり証すような事はしません。

すいかの収穫は素人でもできるようになっています。
受粉から45日で確実に収穫していきます。
天気がよくて1日、低温なら2日ほどはずらせますが、これが限界なのです。
天気がいい日の収穫なら畑の中を1輪車で15個ほど乗せて往復できますが、
雨がふると板を敷いて走るので7個ほどしか乗せられません。
雨の日は往復回数も多いし、休むことができないので大変なのだそうです。
もちろんすいかに泥を付けるわけにはいきませんから、車に載せるときに
1個づつ拭きます。
こうして選果場に集められます。

ざっと書きましたが、今回ご紹介できなかった作業もたくさんありますが、
もし詳しく知りたければ、
栽培を詳しく公開してくれるサイトを探してみてくださいね。

選果場 (目ぞろえ会)
大きいのから順番に並べてあります。ここからが今回連れていってもらった方の
出番です。
生産者3組の夫婦と農協職員、我々同行の3人が見守る中、始まりました。

最初に靴を脱いで(履いているとすいかの間に足を入れられないので)じゅうたんの上にきれいに
並べられたすいかの間に入っていって、上からながめながら1つ1つ叩いていきます。
全部はたたきませんが大きいすいかと形状からあやしいと思ったものだけ叩くのだ
そうです。
たくさん並んでいる中から1玉抜き、農協職員に渡し違う場所にどんどんと
並べられていきます。
生産者が3人いますが、全部チェックを行ったときには、汗だくでした。


並べられたすいかを前に説明が始まります。

秀品・優品のランク分け
中身の状態
秀品については絶対に中が空いていてはいけません。
どんな大きさの物をとってもだめです。
優品の場合はL以上のすいかで亀裂までならいいですが、
切ったときに中心が空洞になっている状態で、そのままだと、
もう1ランクしたの「良品」に落ちてしまいます。
これを「棚落ち」といいます。 

この作業は生産者が並べる段階で1つ1つ叩いて内容を確認します。
確認しながらランク別に仕分けていきます。
農協職員が同席しているのは農家の方が一応仕分け物を、
再度確認しながら農協名で出荷するので、最終責任者という事だからです。

音だけでどこにどれだけ空きがあるのか、皮の厚さ等も判断できるのだそうです。
皆さん本当に耳がよくなくてはできません。
外観等でもある程度判断できますが、最終的には音なのだそうです。

外観
キズ
横から見て半分より上に入っている傷は、秀にはなりません。
下だったら許されることもあります。
私から見れば、たいした傷でもないと思いましたが、この1玉が全体の単価に
影響するので、産地間競争では命取りになることもあるのだそうです。
すいかについている傷は決して人間が付けた物ではありません。
まだ実が小さい頃は外皮が柔らかいので、風で葉やつるに叩かれたり、
葉が風に引っ張られるときに地面にこすりつけたりしたときに付くのだそうです。
つまり幼少の傷です。これは大きくなってもどうしても残ってしまうみたいです。

形状  傾ぎ
「かたぎ」専門用語の様に感じましたが、ようは、つるの付いている場所が斜めに
なっていることです。
この場合、お日様にあたっている場所は肥大しますが、反対側は成長しないので
この様になるのだそうです。
確かに丸い方はきれいな縞模様ですが、反対側は縞模様がつまっている感じです。
これは味にかなり影響を及ぼす事で、丸くなっている方とたいらになっている所では、
糖度で2度くらい違うそうです。
この様なすいかは一般には目に入らない場所で処理されているので、
見たことがない人の方が多いはずです。


雨降りに収穫すると、ぬれているときはわかりませんが、
市場に着く頃には水分が抜けて白くなります。
この様になるとクレームの対象になるので気をつけて下さいとの事。
他産地ではブラッシングをかけているようですが、ここにはその様な機材がないのです。
だから1玉1玉手作業で磨き上げます。

つるの切り方
収穫作業上ついおこなってしまうことだが、斜めに切ってはいけないのだそうです。
輸送途中の傷になりかねないのです。

上記がポイントですが、この様な検査をうけて等級(秀品・優品・良品)と分かれます。
大きさごとに並んでいますから、後は等級・生産者番号を入れて出荷されます。

最初に「目そろえ会」と聞いたときに、毎年作っている農家がその様な会をしないと
揃えられないのかと不思議に思いましたが、今回の体験を通してわかったことは、
すいかの選果基準を上げることで、他産地に負けない品質と高値安定を
めざしているから行うのです。

このことは産地ブランドとして、とても重要な事で、同じ時期に出荷する他農協に対しても
差別化を図ることなのです。
もちろんこの指導をしているのは荷受け会社
(各産地より商品を集める会社です。小売店が買いに行くところ)です。
この様に厳しい選果基準を持つことによって産地ブランドができるのです。

農協職員さんがまとめの話をしていましたが、荷受け会社さんに言われたとおり、
きちんと選果を守って出荷しますから高く買って下さいと言われました。
まったくその通りの話だと思いました。

それから生産者との雑談の中で今年のすいか作りは難しかった。
やはり今年は受粉の時期が低温で苦労したそうです。
早生種のすいかでは死に種(種が黒くならず白のまま)が多く見栄えが悪いと
言われました。
中手よりはかなり期待できると思うと反省やら感想を述べられていました。

この日は初出荷でしたが、夜には私たちを焼き肉屋さんに招待していただきました。
やっぱり年齢からするとおじいさんでしょうか?子供も50歳前後で誰も後を
継がないのだそうです。
生産者3夫婦とも焼き肉が大好きで、
すいか収穫の様な重労働をした後の一杯がうまいとうれしそうに飲んでいました。
焼き肉が好きなのだと思っていたら、この産地も住宅がどんどんと建ち、
焼肉屋さんが何軒もあるのだそうです。
まるで畑のまわりに家が建っている様です。

昔は組合員も多かったと話されていますが、これだけ住宅に囲まれながら
65歳70歳のおじいちゃん・おばあちゃんが作ってるすいかですから、
言葉ではがんばっていつまでも作って欲しいと言いましたが、
本音では誰か一人でもやめてしまったらもう食べられないのだと思います。
この様な農業環境を考えると本当に食料は大丈夫なのかと思います。

帰りの車の中で考えることは、結局選果基準を厳しくすることは農家の手取りや
農協のブランドには欠かせないことだが、味にはやっぱり何も関係ありません。
私が見たあの上に傷が入ったすいかは優品としてランクを下げられますが、
味では何も秀品と変わりません。
現在店頭では切ったすいかを中心に販売しています。
傷があることで味に何か問題があるのでしょうか。
切ったすいかを販売するためには大玉を生産しなくてはいけません。
この事があのおじいちゃんにとってどれほど苦労をかけているのでしょう。

生産者として販売店や消費者の事を考えながら栽培するのが当たり前なのでしょうが、
私個人の感想は体だけは大切にして欲しいと思いました。
笑顔で話されるおじいちゃんの顔が今も忘れられません。









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